「リズムと歩容を自律生成する4脚ロボット制御器 - ネコ・後2脚歩行-走行遷移のシミュレーション -」
日本ロボット学会誌, Vol.42, No.10, 2024 (Dec.) (PDF)(J-Stage)
論文内で重要な動画
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脊髄ネコのトレッドミル上・後二脚・歩容遷移 by S. Grillner (1980): 動画(.mp4)
- 最初は左右逆位相・歩行が発現(13s〜22s). ベルト速度の上昇にしたがって胴 体ピッチ運動に小さな振動が発生し始め(22s), 左右逆位 相・走行 への歩容遷移が発現(24s〜27s). さらなるベルト速度の上昇により, 胴体ピッチ運動の振動振幅が増大し, 左右同位相(に近い)・ 走行へ 歩容遷移(28s〜),ただし左右に位相差は残る(gallop相当). そして最終的に,大きな胴体ピッチ運動をともなった 左右同位相・ 走行(bound 相当)が発現(46s〜). 細かいところはスロー再生で確認してください.
- この動画で左右逆位相・走行部は短くて跳躍相が分かりにくいが,文献[14]のFig.1-Aには速度0.7[m/s]か ら走行に遷移することが, 文献[15]のFig.2-Cには走行(1.0[m/s])時の筋活動として左右逆位相であることが,明確に示されている.
- S. Grillner: ``Spinal Cat Movie (1980),'' The basal ganglia and brainstem locomotor control, at 1min. 31sec., E. Garcia-Rill eds., 1989.
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後2脚モデルを用いたトレッドミル上・歩行-走行・歩容遷移シミュレーション(Fig.7に相当 )
- ベルト速度を0.14(m/s)から0.30(m/s)に増加:左右逆位相の歩行から走行遷移 実時間(.mp4), スロー(.mp4)
- 遷移後に,胴体ロール運動・振幅が少し小さくなり,胴体ピッチ運動に振動が発生し たことに注目
- 4.6節,"Vb=0.14, 0.3, 0.42 [m/s]での結果":0.14から連続してベルト速度を0.3,0.42と上げて,0.42から0.3,0.14と下げた動画(.mp4)
- 5.4節,"なお,ベルト速度を再度下げると,逆の過程を経て定常歩行に戻る":動画(.mp4)
- 付録B,"4 章の2 脚モデルと同じ関節構造と物理定数を持つ無拘束4 脚モデルを, 同じ脚制御器パラメータで定常歩行させとき"(Fig.13(a)に相当 ):動画(.mp4)
- 付録C,"ベルト速度適応の有無で比較した結果": 適応なし(.mp4), 適応あり(.mp4)
- 走行時の支持脚相で,脚先・後方伸展が少し分かる程度には,改善しました(違いが分かり難いですが...).
論文内で引用した研究の動画
- 第1章,"上位指令のパラメータ変更により歩容遷移を行う手法[19]": 動画(.mp4)
- 2.7節,"三次元4脚シミュレーションにおいて...摂動が働くとき,ロール面内姿勢安定化...示した[40]": 動画(.mp4)
- 2.7節,"4 脚ロボットにより...シミュレーション結果を再現し...実際に可能[41]": 動画1(.mp4), 動画2(.mp4)
- 4.6節,"参考のために,...制御器に興奮性のRG間協調を導入して得られた 同位相・走行の結果": 動画(.mp4)
- 5.5節,上位指令の意味と次の課題,"すなわち,中脳ネコにおいても上位指令による...リズムと歩容の自律遷移を脊髄・感覚-運動機能のみで説明可能...":動画(.mp4)
- 5.5節,上位指令の意味と次の課題,"4脚ロボット制御に適応可能...":動画(.mp4)
・ロコモーション強度に相当する上位指令値を上げた(upC↑)ときに,自脚の屈筋活性度(αF^self)とリズム発生器・位相(Φ^self),および,他脚のαF^* (* : cntr, ipsi, diag)情報にのみ基づいて,自律遷移は発生する.cntr:contralateral(対側), ipsi:ipsilateral(同側), diag:diagonal(対角).
- walk歩容生成:walk歩容では,明示的脚間協調はすべて無し.離地条件は,前脚:論文(5)式の(αF^self>0)条件のみ,後脚:αF^self条件とΦst^self条件の組合せ.upC=1で移動速度は0.19 m/s.
- walk歩行-trot歩行-trot走行:walk歩行(upC=1, 0.19 m/s)から,upC↑=1.4によりトリガ(明示的脚間協調)が発生し,walk歩行からtrot走行へ遷移.trot歩容では,左右および前後脚間の明示的脚間協調は無しで,対角脚間の明示的脚間協調のみあり.その後,再度のupC↑=1.6により別のトリガが発生しtrot走行へ遷移.以後,段階的なupC↑によりtrot走行(upC=2.2, 0.3 m/s)まで移動速度上昇.当面の目標は達成できた...
- pace歩行-trot走行:upC↑によるpace歩行からwalk歩行への自律遷移の途中で,トリガが発生しtrot歩行へ遷移.その後,再度のupC↑により別のトリガが発生しtrot走行へ遷移.「移動速度上昇により現在の歩容が力学的に不安定になり,自律的にpace歩行,walk歩行,trot歩行,trot走行へと歩容遷移した」という,本研究の現在の目標を少し試みた.結果はまだ「甚だ」不十分である.
・まだ始めたばかりでパフォーマンスは不十分ですが,本研究の枠組みの妥当性は示されたと考えています.
・上位指令値(ロコモーション強度)増強のみで,脚間位相差だけでなくリズム(振動数とデューティ比)も自律遷移していることに着目してください.
・遊脚着地角制御や上方キック制御などの感覚フィードバック導入によりパフォーマンスを向上できると考えていますが,当面(平地でのシミュレーション中)はupCに対するフィードフォワードしか行わない予定です.現在,感覚情報は,「リズム発生器での脚相遷移」と「パターン形成部でのSW相・歩幅制御とST相・脚高制御」と「モータ出力部でのPD制御」でのみ使用されています.
関連する資料
- シミュレーションや小鉄実験での脚先軌道計算の詳細(PDF): 以下から抜粋
C. Maufroy: ``Generation and stabilization of quadrupedal dynamic walk using phase modulations based on leg loading information,'' Ph.D dissertation, University of Elector-Communications, 2009. (PDF)
- Orlovsky教科書:第10,11章の和訳 by 木村
- G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina and S. Grillner: Neural control of locomotion. Oxford Univ. Press NY, 1999.