生物規範型二足ロボットの研究について

ASHIMOなどのヒューマノイドロボットなどでよく使われるZMP(ゼロモーメントポイント)を指標とする姿勢制御手法は厳密なロボットの力学モデル(運動方程式)と環境(床面など)のモデルを必要とします。また、各ステップサイクルごとに大きな質量と慣性モーメントを持つ全身をアクチュエータにより加減速する必要があるためエネルギ効率が非常に悪くなります。

 一方、二足歩行ロボトを倒立振子等でモデル化し、リミットサイクル註1】を構成する制御手法(遊脚着地角制御など)を用いることによりエネルギ効率に優れた歩行が実現できることは昔からよく知られています。また、このようなナチュラル・ダイナミクス註2】を利用する歩行註3】は、人の通常歩行に近いと言われています。電気通信大学では、2次元二足ロボット「鉄郎」を用いて人のSpllit-belt上歩行註4】における適応モデルの構成を行いました。

 京都工芸繊維大学では、人と同様に「リミットサイクルを構成する制御手法」でエネルギ効率に優れた3次元二足歩行を実現するために「KITARO」という名前のロボットを開発しました.まだ上体がなく歩き始めたばかりですが,将来的には鉄犬のような不整地自律適応を二足ロボットで実現したいと考えています.また、四足歩行ロボットの研究と同様に、低速での姿勢制御とリズム運動制御の統一的な扱いが可能となる手法を提案し,二足ロボットにおいても一つの手法で低速歩行から中速歩行・高速走行まで実現可能にしたいと考えています(脚式移動制御手法の統一).

 また人はリミットサイクル型歩行を行いながら視覚に誘導されて遊脚着地点を選択することができます。現在、鉄郎に視覚を搭載し、床面のマークを認識しリミットサイクル型歩行を維持しながらマーク位置に遊脚を着地させる制御手法の研究を行なっています。

【註1】非線形力学系において現れる安定な周期パターン

【註2】重力場で身体が持つ力学特性(支持脚は倒立振子で、遊脚は単純振子でモデル化されることが多い)

【註3】アクチュエータを持たない歩行機構が下り坂を歩く「受動歩行(passive dynamic walk)」がよく知られている

【註4】左右のベルトの速度が異なるベルトコンベア上での歩行

○ 獲得した関連する研究費