四脚ロボットの適応的不整地動歩行

研究の経過・概要 with Movies

「環境を外乱とみなすのではなく，環境と身体との間の相互作用によって創発的に生み出される運動が歩行・走行である」との定義の元に，不整地上で非常に柔軟 かつロバストな動物の歩行に関する生物学や神経生理学分野での知見を参考にして，４脚ロボットの機構と制御手法を新たに開発した．

歩行運動を生成するシステムはそれぞれ独自の非線形ダイナミクスを持つ「機械システム」と「神経システム」から成り，これら二つの系がカップリングされて構 成される動的システムは環境との相互作用を通して適応的な運動を創発的に生成する．カップリングされた力学系は常に自身のダイナミクスに従い，変化する環境に 自律的に対応可能であり，また，神経系の内部パラメータを操作することにより別の状態に移行することが可能である．従って，ロボット自身や環境のモデル化，自 律的な運動計画，計画された運動と実際の運動との矛盾といった従来のロボティクスにおける困難な問題を避けることが可能である．

• 2006年 (鉄犬3 & 4)
  レーザレンジセンサを用いた視覚誘導: (人の後を追う : MPEG 5M)．
  
  
• 2004年6月- 2005年 (鉄犬3 & 4)
  NEDOより受託を受けて2005年6月の愛知万博・プロトタイプロボット展でデモを行うために自立型の鉄犬3&4を開発した．

  ビデオ

  • 鉄犬4の愛知万博デモ: (2min. 43sec. : MPEG 14M)
    
    

• 2003年4月- 2004年6月(鉄犬2)
  自立型の鉄犬2を製作した．鉄犬１において，ソフトウェアで実現していた仮想バネ-ダンパ系のバネをハードウェアで構成する．遊脚と支持脚で剛性が切り替 わる必要があるため，機構設計の段階からこの考えを取り入れた．支持脚時は，バネの力を利用しエネルギ消費を抑え，遊脚時はバネが影響しない機構を設計し た．

  ビデオ

  • 屋外実験: (自然環境[林道]， 0.5 m/s, 55 sec. : MPEG 15M)
  • 屋外実験: (電通大キャンパス内， 0.5 m/s, 60 sec. : MPEG 12M)
    
    

• 2003年4月- (鉄犬1 & 2)
  視覚適応の研究を実施中
  
  
• 2000年10月-2003年6月(鉄犬1)
  動歩行特有の問題を考慮した上で，CPG (Central Pattern Generator)と呼ばれるリズム発生器，センサ入力によるCPG位相の調節，剛性と中立点可変の仮想バネ-ダンパ系という構成要素間の協調が本質的に重要であり， ピッチ運動・CPG・ロール運動という三者間の相互引き込みの結果，歩行速度・歩容遷移・不整地適応・安定性・エネルギ消費といった歩行の代表的な問題が 非常に少数のパラメータで規定・評価できることを示すことができた．

  ビデオ

  • 小石の上を歩行 (MPEG 1.8M) slow motion(MPEG 4.5M)
  • 回転半径1mでの旋回 (MPEG 2.3M)
  • 高さ4cmの障害物と坂の乗り越え (MPEG 2M)
  • 横方向の坂の乗り越え (MPEG 1.5M)
  • CPGへのロール運動フィードバックの有効性：
    無い場合は CPGは脚の振動との同調に失敗 (MPEG 2.4M) 有る場合は CPGは脚の振動と の同調に成功 (MPEG 2.4M).
  • 高さ2cmの障害物の乗り越え (MPEG 1.1M)
    足首受動関節によるつまずき回避をスローモーションで確認できる.(MPEG 1.4M)
  • 傾き10度の坂の上り下り (MPEG 1.2M)
  • 歩行速度を上げたときの自律的な歩容遷移（ウォーク歩容からトロット歩容へ） (MPEG 1.5M)
    
    
• 1999年11月-2000年3月 (Patrush)
  CPGとCPG経由の反射を用いることにより，中 程度の不整地上のなめらかな動歩行を非常に簡単に実現することができた．

  ビデオ (12°の坂の登り降り，うねりのある不整地)

  • 長い坂の登り下りと高さ3cmの段差乗り越え (MPEG 1.4M) [Dec.]
  • 間隔の長いうねり上の歩行 (MPEG 1.3M) [Dec.]
  • 間隔の短いうねり上の歩行 (MPEG 1.3M) [Dec.]
    
    
• 1998年-1999年10月 (Patrush)
  生物学・生理学的知見に基づいて，「筋肉剛性モデル」・「前庭脊髄 反射」・「小脳における運動調整」・「視覚情報に基づく歩行運動の変更」と いう4つのレベルにおける適応制御により不整地歩行を実現することを提案し， 凸 がある平面から12°の登り坂への 自律的な歩行、視覚情報に基づく高さ3cmの段差乗り越えなどが実現できた． 視覚情報からの神経振動子への指令信号の学習的生成手法などが今後の課題となっ ている．

  ビデオ (凸がある平面から12°の登り坂)

  • 「筋肉剛性モデル」のみを用いた場合には、凸の乗り越えと7°の坂の登りには 成功したが、 12°の坂の登りに失敗した。(MPEG 415K)
  • 「筋肉剛性モデル」と「前庭脊髄反射」を用いて歩行には成功したが、 CPG と筋骨格系の運動のズレにより滑べりや足踏みが発生した。 (MPEG 750K)
  • 「小脳レベルでのCPG周期調節」により自律的適応歩行に成功 (MPEG 528K)
  • 同上(MPEG 1.1M)
    
    ビデオ (12°の長い坂の登り下り)
  • 「小脳レベルでの伸長反射調整」により長い坂の昇降に成功(MPEG 721K)
    
    ビデオ (高さ3cmの段差の乗り越え)
  • CPG入力調節なしで前脚がつまづく(MPEG 387K)
  • CPG入力調節なしで支持脚トルクの不足のため途中で止まる(MPEG 500K)
  • 視覚に基づくCPG入力調節により乗り越えに成功(MPEG 483K)
    
    
• 1997年度 (Patrush)
  平地における走行実現のためにバネ機構と神経振動子を組み合わせ，二つの振 動を調和させることにより跳躍が可能なことと，神経振動子の引き込み作用に よりホッピングからバウンスへの歩容遷移が可能であることを示した．

  ビデオ

  • 走行実験(Hopping -> Bounce)(MPEG 1.3M)
    
    
• 1996年度 (Patrush)
  不整地における動歩行のために，神経振動子を補佐する反射機構として「伸長 反射」と「屈曲反射」を導入し，遊脚への外乱などに対して安定した歩行運動 を実現した．さらに，神経振動子の単一駆動信号の簡単な操作により，段差の 乗り越えのような不整地歩行が可能であることを示した．

  ビデオ

  • 整地歩行実験(MPEG 480K)
  • 障害物乗り越え実験(MPEG 330K)
  • 段差乗り越え実験(MPEG 540K)
    
    
• 1994年度 (Patrush)
  神経振動子を用いたネットワークを構成し，実機の四足歩行ロボットで実験を 行なった結果，ペースとトロットの2種類の動歩行を実現すると共に，神経振 動子によって動歩行の周期安定性を維持する事が可能である事を確認できた． しかし，下のビデオに示すように平地においても支持脚が滑べることがあり， 神経振動子のみにより制御することの問題点が明らかになった．

  ビデオ

  • Pace in slow motion(MPEG 103K)
  • Trot in slow motion(MPEG 239M)

パトラッシュと鉄犬のの写真&ビデオ

既発表論文，予稿集原稿