生物規範型四足ロボットの研究について

四足動物と昆虫はまったく別個に脚を進化させましたが、両方の歩行には「リズム発生器 (CentralPatternGenerator:CPG)」と抹消からの感覚などによって発生する「反射」の組み合わせによ り生成・制御されているという共通点があります。2007年まで在籍した電気通信大学では、このような神経系を数式でモデル化し自立型四脚ロボット「鉄犬2」の制御に用いることにより不整地自律適応動歩行を2003年に世界で初めて註1】実 現し、日本ロボット学会論文賞 (2003)、船井情報科学振興賞 (2004)、SAB Best Technical Paper Award (2004)を受賞しました。また,2005年に愛 知万博プロトタイプロボット展で外装をつけた「鉄 犬4」を用いた留 守番犬ロボットのデモを2週間にわたって行い、好評を博しました。

 しかし,鉄犬では無次元速度:0.3〜0.7(0.4〜1m/s)くらいでの歩 行・走行は実現できましたが,一般の人には意外かもしれませんがゆっくり歩くことが苦手でした.これは中高速では遠心力が重力よりも優勢で姿勢制御の重要性が小さいからで,低速では姿勢制御をしっかりとやる必要があること を示しています.

 我々はネコの制御手法を参考にして,ヒューマノイドロボットなどでよく使われるZMP(ゼロモーメントポイント)手法の ような力学モデル(運動方程式)を必要とせず,脚負荷センサ情報のみを脚相(支持脚相/遊脚相)の切り替えに用いることにより低速での姿勢制御とリズム運動制御の統一的な扱いが可能となる手法を提案しシミュレーションでその有効性を 確認しました.京都工芸繊維大学では、この手法の有効性を実機で確認するために「小 鉄」という四脚ロボットを製作し,現 在実験中です.将来的には,四足ロボットにおいて一つの手法で低速歩行から中速歩行・高速走行まで実現可能にしたいと考えています(脚式移動制御手法の統一).

【註1】近年話題のBigDog(2005年以降)に先駆けています。

○ 獲得した関連する研究費